ウェルビーイング経営を知る

【目次】
ウェルビーイング経営とは
ウェルビーイング経営が注目される背景
ウェルビーイング経営と健康経営の違い
ウェルビーイング経営の取り組み事例
まとめ
前回のブログ記事では、「ワーク・イン・ライフ」の考え方について学びました。
コロナ禍を経て半ば強制的にテレワークを経験した私たちですが、そのコロナ禍が、働き方に対する考え方や企業の在り方が大きく変わっていくきっかけにもなりましたよね。
そのような中で、従業員が健康で幸福に働くための企業側の取り組みとして、「ウェルビーイング経営」というものが注目されるようになりました。
今回はこの「ウェルビーイング経営」について、少し前に出ていた「健康経営」との違いなどにも焦点を当てながら見ていきたいと思います。
1. ウェルビーイング経営とは
ウェルビーイング経営とは、従業員が身体的、精神的、社会的に満たされるように組織の環境を整えていく経営手法のことを言うようです。
実際には、従業員や組織全体、消費者、地域社会といった「すべてのステークホルダーの幸福を追求するための経営手法」といった広義の意味で使われることもあるようですが、そもそも「ウェルビーイング」とは一体何を指すのでしょうか?
「ウェルビーイング」の定義は、1948年に発効された「世界保健機関憲章」の前文における「健康」の定義がベースとなっているようです。
HEALTH IS A STATE OF COMPLETE PHYSICAL, MENTAL AND SOCIAL WELL-BEING AND NOT MERELY THE ABSENCE OF DISEASE OR INFIRMITY.
健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、單に疾病又は病弱の存在しないことではない。
ここに出てくる「福祉の状態」とは、良好な状態、満たされている状態を指します。
つまり、もう少し分かりやすく言い換えると、健康とは、病気ではないとか弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態にあることを言うということですね。
心身ともに健康であれば、肉体的・精神的に満たされている=肉体的・精神的福祉が実現している、ということは想像できますが、「社会的福祉の状態」とはどのような状況を言うのかというと、経済面やキャリア、家族関係などにおいて満たされている状態を指すようです。
これは、健康を個人だけの問題として捉えるのではなく、社会的な問題としても捉えていることを意味します。
つまり、不健康であることの発生要因の半分以上は社会的な環境に依存していると考えるということです。
例えば、健康に害があると思われる喫煙を止められない場合を例に見てみましょう。
以前は本人の意識が不足しているというように考えられていましたが、現在はその人の周りに喫煙者が多いことやストレスの多い職場環境、喫煙場所に容易にアクセスできてしまう・・・など、環境的な要因が半分以上を占めるという「Social Determinants of Health(健康の社会的決定要因)」の考え方が世界的にも主流のようなのです。
(もちろん、本人の意識にも問題がないわけではないと個人的には思います。)
こうした流れもあり、「健康管理は個人だけが抱える問題ではなく、企業も支援することで解決すべき経営課題である」という動きが徐々に広がってきました。
その結果、全従業員の「肉体的・精神的・社会的福祉の状態」を実現すべく、企業として様々な取り組みを行っていくという「ウェルビーイング経営」が注目されるようになっていったようです。
2. ウェルビーイング経営が注目される背景
先ほど、ウェルビーイング経営が注目されるようになった経緯を簡単にご紹介しましたが、実は他にも注目を集めるようになった要因があります。
労働人口減少による人材不足
少子高齢化の影響もあり、日本の労働人口は減少していて、多くの企業が人材不足という課題を抱えています。
また、終身雇用制度の崩壊や雇用の流動化が進み、企業にとってはますます人材採用・人材確保が困難な状況となっています。
そのような中で選ばれる会社になるために、「求職者や従業員にとって魅力的な職場環境づくり」がより強く求められるようになりました。
働き方改革による労働環境の変化
前回のブログ記事でも少し触れましたが、モーレツに働くことが評価に繋がる時代は終わり、現在はハードワークが社会的にも許容されない時代となりました。
従業員の多くがワーク・ライフ・バランス、あるいはワーク・イン・ライフを重視するようになり、時間や場所にとらわれない働き方を希望する人も増えていく中、企業にもそうした変化への対応が求められており、その解決手段としてウェルビーイングの考え方が注目されています。
SDGsへの意識の高まり
今やSDGsへの貢献を目標に掲げていない企業はほとんどないのではないかと思いますが、SDGsの中にもウェルビーイングに関連するゴールが含まれています。
すべての人に健康と福祉を(ゴール3)
これは、あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進するという目標です。
働きがいも経済成長も(ゴール8)
これは、包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進するという目標です。
これらの達成に貢献するために、ウェルビーイング経営に注目し、取り組みを実施する企業も増えてきました。
3. ウェルビーイング経営と健康経営の違い
ここまでウェルビーイング経営についてザっと見てきましたが、ウェルビーイング経営と似た意味で使われることの多い言葉に「健康経営」というものがあります。
個人的には「健康経営」という言葉の方がなじみがあったのですが、この「健康経営」と「ウェルビーイング経営」はどう違うのでしょうか?
まず、「健康経営」の定義について、経済産業省は以下のように示しています。
健康経営とは、従業員等の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること。
これを見ると、「健康経営」の目的は従業員の健康に配慮することを手段として経営的なメリット(人材戦略など)を得ることであるということが分かります。
これはウェルビーイング経営も同じで、注目される背景にもあるように「従業員の肉体的・精神的・社会的福祉の状態」を実現することを手段として、企業としての付加価値を向上させることを目的としています。
ウェルビーイング経営も健康経営も、「従業員の健康への配慮」はあくまで手段ということですね。
それでは、両者の決定的な違いは何なのでしょうか?
簡単にまとめてみました。

ここから分かるのは、ウェルビーイング経営の方がより広義の意味で従業員の健康あるいは幸せを考えているということです。
また、視点の違いも大きな特徴の一つと言えるでしょう。
従業員を巻き込みながら取り組みを推進する際、「健康経営」の言葉を使ってしまうと「なぜ会社のイメージアップのために自分の健康についてとやかく言われなければならないのか」などと反感を買う可能性も出てきてしまいます。
「健康」は個人の価値観によって捉え方が大きく変わります。自身の健康・幸福に対する従業員一人ひとりのマインドチェンジを促すには、従業員の視点から取り組みを検討する「ウェルビーイング経営」の概念を重視する方が、会社全体としても取り組みを推進しやすいのかもしれませんね。
ただし、ウェルビーイング経営の推進は、企業の利益と相反する場合もあります。
利益と同時に「従業員の幸福」も追求していかなければならず、場合によってはすぐに利益に結び付かない取り組みを進めていかなければならないこともあるかもしれません。
ですが、短期的には利益減少を招いたとしても、ウェルビーイング経営を推し進めることが中長期的に見て企業の成長に繋がることは間違いありません。
大切なのは、「ウェルビーイング経営」を経営戦略として捉え、実現に向けた具体的なアクション・成果指標を定めておくことです。
経営陣が方向性を掲げるだけでは不十分であり、具体的に何をするのか、推進することによって何が変わるのかについて、現場の従業員まで納得している状況こそが、高いコミットメントを生み出せる一つの鍵となります。
これらに注意しながらウェルビーイング経営を推進することができれば、企業価値向上という目的の達成により近づけるのではないかと考えます。
4. ウェルビーイング経営の取り組み事例
次に、ウェルビーイング経営の取り組み事例として代表的なものをいくつか見ていこうと思います。

いずれの取り組みにしても、まずは従業員一人ひとりが置かれている状況を正確に把握することが重要となります。
HR Tech(Human Resource Technology)界隈にも様々なサービスがありますので、デジタル技術の力も借りながら各企業に合った取り組みを推進していけたら良いですよね。
5. まとめ
今回は「ウェルビーイング経営」について学んでみましたが、今まで大した違いはないと思っていた「健康経営」との違いが分かり、なんとなくのフィーリングで解釈した状態で、安易にそれぞれの言葉を使用することの危険性を改めて感じることができました。
同じようなものでしょうと思っているものでも、きちんと調べてみると決定的に違う部分があったり、逆にやっぱり同じような意味だったということが分かったりと、今回は特に、自ら調べてみること、学ぶことの大切さを痛感した回となりました。
ウェルビーイング経営は、肉体的・精神的な健康のみならず、社会的にも満たされている環境を企業として整えていく経営手法ですが、これは前回学んだ「ワーク・イン・ライフ」の考え方に関連する施策でもありますね。
私自身もこうした知識をどんどん吸収し、より働きやすい、そしてここで働きたいと思えるような職場・企業づくりにいつか貢献できたらと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


