メタバース × 学校教育

【目次】
教育におけるメタバース活用法
メタバースを教育で活用するメリット
メタバース活用に当たっての課題
まとめ
ゲームやショッピングなどの体験価値の提供やオフィス空間の代替、あるいはリアル空間と並行したコミュニケーションの場など、様々な分野で活用されつつあるメタバースですが、教育現場においても次なるオンライン教育の形としてメタバースを活用した学習方法に注目が集まっています。
今回はそんな「メタバース × 学校教育」に焦点を当ててみようと思います。
1. 教育におけるメタバース活用法
いきなりですが、すでにメタバースを教育ツールとして活用している事例が国内外にありますので、まずはそちらを紹介してみたいと思います。
東京大学「メタバース工学部」
東京大学は2022年秋に、中高生や社会人を対象にメタバース内で工学や情報を学べる教育システム「メタバース工学部」を設立しました。
メタバース工学部は、中高生向けの「ジュニア講座」、社会人向けの「リスキリング講座」、工学進路・キャリアの総合情報サイトの三つから成り、年齢、ジェンダー、居住地、立場を問わずすべての人が学べるダイバーシティ&インクルージョンを基本コンセプトとしていて、新しい学びの場として好況のようです。
スタンフォード大学「Virtual People」
アメリカのスタンフォード大学では、VRヘッドセットを活用して講義を行う「Virtual People」というコースが設置されています。
こちらのコースでは授業のほぼすべてでVRを利用しており、学生がバーチャル空間に各自アバターを用いて集まり、ディスカッションを行うなどして体感的に実習を行っています。
また、授業では、VRがどのように社会に浸透し、技術的進化を遂げてきたかをバーチャル講義の形式で学ぶほか、VR内での課外学習として、人種的不平等に直面した男性の人生を経験することで、人種的寛容さを学べるコンテンツなどもあるようです。
これらは一例ですが、実際どのように講義を受け、どのような体験ができるのか興味が湧いてきますよね。
先に具体例を示してしまいましたが、教育におけるメタバースの活用法には、主に次のようなものがあります。

メタバースの教育的活用は、時間や場所、環境といった制限を問わずに誰もが教育を受けられるようになることが最大の特徴であり、これによって学生・生徒のみならず社会人の教育機会の確保や、外国語の新しい学び方としても活用が期待できますね。
2. メタバースを教育で活用するメリット
次は、メタバースを教育に取り入れるメリットについて見ていきましょう。
現実世界では取り扱えないコンテンツで学習できる
例えば、理科の実験では危険物質・生物を現実世界でのリスクは一切なしに取り扱うことができ、その危険性についてバーチャルではあるものの身をもって体感できるようになります。
また、CGや映像を作り込むことで歴史上の一コマを追体験できるようにもなります。
平安貴族の暮らしや戦争などに没入して追体験できることは個人的にとても興味がありますし、知識の定着としても効果がありそうですよね。
アバターを通じて能動的な体験学習ができる
ビデオ会議ツール等を使ったオンライン授業は画面に向き合う時間が多く、受け身の学習になりがちですが、メタバース空間内ではアバターを介して「行く」「触れる」「体験する」「ディスカッションする」などを行うことができ、能動的に授業を受けることができます。
また、これまで教科書や2次元のイラストなどによるインプットに頼り、人間の想像力で補完することによって学習されてきた内容を3Dで立体的に見ることができるようにもなります。これにより、直感的・体感的な学習が可能になります。
仮想空間内で失敗を経験できる
バーチャル体験や仮想空間内で行う思考・行動は、たとえ失敗したとしても現実空間で同様の経験をするより、心身のダメージを軽減することができます。
現実空間の自分は大きなダメージを受けずに済むため、失敗を怖がらずに臨むことができ、失敗から学ぶ環境を作りやすくなります。
先ほども書きましたが理科の実験を例にすると、あえて生徒に実験を好きなようにやらせて、危険を体感してもらうなんて方法もありますね。
学校へ通えない生徒でも参加できる
時間や場所を問わず、ネット環境さえあれば誰でも参加できるため、身体的、精神的な事情、あるいは家庭の事情等で登校できない生徒でも遠隔でどこからでも学校教育を受けられるようになります。
また、「学習」の機会のみならず、学校に通うという経験やアバター同士で一緒に遊ぶという経験も、メタバース空間内で実現することができます。
ゲーム感覚で没頭しながら学び、体験できるため、授業に興味を持てない生徒のモチベーションを高めることも期待できますね。
遠方の学生とのコミュニケーションが可能になる
現実世界では距離が離れていても、メタバース空間内では近距離でコミュニケーションを取ることができ、共同作業などもできるようになります。
また、海外の学生と同時に接続することで、語学学習や文化交流などのバーチャル留学も叶います。
以上、メタバース活用のメリットを見てきましたが、個人的に魅力的だなと思ったのは、「現実世界では取り扱えないコンテンツで学習できる」という点です。
歴史上の一コマを追体験できるのもとても興味がありますが、たとえば宇宙空間や深海に降り立つことができたら、自分自身の興味関心の幅も広がりそうですし、将来どのような仕事に就きたいかを考えるきっかけにもなりそうですよね。
メタバース空間内での学習体験は、その時々の学習のみならず、生涯の学びに対してもより影響を与えるのではないかと思いました。
3. メタバース活用に当たっての課題
ここまでメタバースを教育に活用することによって得られる良い面ばかりを見てきましたが、メタバースはまだまだ発展途上のサービスであるため教育に取り入れるに当たってはもちろん課題も存在します。
現状、どのような課題があるのか見ていきましょう。
初期費用がかかる
メタバースを活用するにはインターネット環境の整備が必要なほか、VRゴーグルの準備やVRゴーグルに対応したスペックのパソコン、教育現場専用の独自のメタバース空間構築に伴う開発・運用費など、導入するまでにかかる費用が高額になります。
GIGAスクール構想が進み、インターネット環境の整備といった面はクリアできるかもしれませんが、その他の費用を考慮すると導入に二の足を踏んでしまうのはわからないでもないですよね。
使用可能なコンテンツが少ない
教育現場でのメタバース活用は増えてはいるものの、まだ十分なコンテンツが揃っているわけではないのに加え、対応している学校や教育機関も限られているのが現状です。
今後の技術革新や市場の拡大に伴い、メタバースの教育コンテンツや専用教材が開発されることが期待されますが、現時点では利用できるコンテンツが少ないと言えます。
教育者側のITリテラシーに差がある
教える側のITリテラシーによって活用の効果に大きく差が出ることが予想されます。
また、業務負荷の大きい教員が新たなITテクノロジーを学ぶ時間の確保が困難なことに加え、学習環境についても地域や学校の規模によって差が出てしまいかねないことも、導入の障壁になっています。
VR酔いや依存症へのリスクがある
VRヘッドセットを装着して長時間メタバース空間に滞在すると、乗り物酔いに似た症状が出る場合があるそうです。
また、メタバース内での活動に没頭しすぎて現実世界での生活や人間関係が疎かになったり、メタバース空間内での成功体験が現実世界で得られない場合、その違いから精神的なストレスを感じたりすることもあるため、使用時間の管理や現実世界とのバランス等、注意しながら活用することが求められます。
これらの他にも、生徒の参加意欲を引き出す工夫や学習目標に適したコンテンツの設計、現実世界とメタバース内の連携などについても検討する必要があり、簡単に解決できる課題ばかりではないことがうかがえます。
ですが、メタバースを教育に活用できればその質や効果は大きく向上することが想像できます。
今後の導入拡大に期待したいですね。
4. まとめ
つい最近、さいたま市とNTT東日本、NTTスマートコネクトが長期欠席をする児童生徒への支援として3D教育メタバースを活用する実証実験を開始することを発表しました。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/16337/
アバターを介すことでコミュニケーションにおける心理的な圧迫感の低減を期待できることから、児童生徒の積極的な授業参加に合わせ、不登校の子たちにも新たな学びの場を提供し、また、同じような境遇にいる仲間の存在を感じ、学び合える状況を築くことで、社会との接点を持ち、自立していける機会となることを目指す取り組みのようです。
この記事を見て、今回「メタバース × 学校教育」についてブログを書いてみようと思ったのですが、様々な事情で現実世界では学校に通うことができない場合でも、仮想の学校空間内で同じように教育を受け、学校という場で得られる知識以外の社会的要素をも身に着けることができるようになれば、本人も周囲の人間も、「学校に行けなかったことがある」ことに対して、ネガティブなイメージを持つことが少なくなり、より生きやすい社会に近づくのではないかと考えました。
もちろん、体育の授業などで培われる運動能力などについてはどうするのが良いのだろうと、すぐに疑問が浮かんでしまうことは否定できませんが、課題を一つひとつ解決し、誰も置いていかない、誰も取り残さない、真の意味でのダイバーシティ&インクルージョンな教育が実現できると良いなと思いました。
2023年のブログは今回が最後となります。
来年はしばらくお休みをいただいた後、再開できたらと思っておりますので、その際はまたどうぞよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

